中国当局“太鼓判”の新型コロナ治療薬は「神薬」?それとも「ただのハッカ」か 欧米を巻き込んだ論争に

中国当局“太鼓判”の新型コロナ治療薬は「神薬」?それとも「ただのハッカ」か 欧米を巻き込んだ論争に 中国

「連花清瘟は新型コロナ肺炎に対して有効であることを示す十分な証拠がある」「連花清瘟を服用した患者は、症状の改善が早く、発熱の時間が短くなる」。

中国衛生当局の専門家チームを率い「英雄」とも称される鍾南山氏がこう太鼓判を押す薬が中国製の「連花清瘟」だ。

連花清瘟とは複数の生薬を配合したインフルエンザ治療に使われる中医薬だ。SARS治療の時期に開発され、「清熱解毒、宣肺泄熱(熱を取り除き肺を解毒する)」機能があるという。

ちなみに中医薬と漢方薬は混同されがちだが、漢方は中国伝統医療を基に日本で発達した医学で、診察や治療方法が異なる。

新型コロナウイルスに対する特効薬は今のところないが、中国衛生当局が発表したガイドライン「新型コロナウイルス肺炎診療方案」にも、発熱を伴う症状の際、推薦される中医薬の一つとして連花清瘟が掲載された。実際に中国では患者に広く投与され、軽症及び中度の患者の治療に効果があったという。いわば中国当局がお墨付きを与えた薬なのだ。

中国はイタリアに10万箱など複数の国にも連花清瘟を寄贈し、対外支援を展開すると同時に「中医薬」の効能を積極的にアピールしている。中国メディアによると連花清瘟は既にブラジル、タイ、カナダなど8か国で、中医薬、食品補助剤などとして、販売が許可されているという。

スウェーデン当局「ハッカ成分だけ」

しかし、中国政府の思惑とは裏腹に連花清瘟は、海外では思わぬ不評を買っている。スウェーデンのメディアは「スウェーデンの税関が調べたところ、連花清瘟からはハッカの成分しか検出されなかった」「新型コロナ肺炎には効果がない」などと報じた。

これに対して、メーカー側は「これは甚だしく事実と異なる。連花清瘟は13種類の中医薬で構成されている、風邪やインフルエンザに対する治療薬であり、ハッカはその中の一つだ」とすぐさま反論。論争も辞さない姿勢を見せたが、スウェーデンでは医薬品として承認されていないため、輸入は認められていない。

さらにアメリカでも、香港から送られてきた1200錠の連花清瘟が税関当局によって押収された。理由は「効果は不明で、アメリカでは承認されていないため」とされている。

アメリカの税関ではこのほかにも偽の新型コロナ検査キットや偽N95マスクなども押収されたという。税関当局者は「パニックに襲われた消費者や詐欺師は、偽造されたり、またはアメリカでは未承認の防護具や医薬品などを海外市場から買い続けており、アメリカの消費者に深刻な健康問題をもたらす懸念がある」と注意を呼びかけた。

「中医学と西洋医学の融合」

中国政府は新型コロナウイルスに対して、中医薬の効果を再三にわたってアピールしてきた。最初に感染が拡大した湖北省には全国の中医の医師ら4900人以上を派遣して対応にあたらせた。また、中国の新型コロナ肺炎患者の9割以上に中医薬を使い、90%以上に効果が認められたとして、「中医学と西洋医学の融合」を訴えている。

国家中医薬管理局の幹部も「国際社会と防疫、治療経験の共有を行い、必要な国・地域に効果的な中国医薬製剤、できる限りの援助を提供したい」と述べるなど、これを機に中医薬の普及促進に拍車をかける構えだ。こうした中、WHO=世界保健機関の対応にも変化が見られる。WHOは新型コロナ肺炎治療に関し、以前HPで「伝統的な薬草療法」は勧めないとの見解を表明していたが、現在は削除されている。WHOに対する中国の強い影響力がこんなところにも及んだのではないか、との見方が広がっている。

現在、世界中で新型コロナ肺炎の蔓延に歯止めがかからないが、中医学であろうと西洋医学であろうと一日も早い治療薬の開発が待たれる。

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