たくさん人々が「最も効率よく辛くないダイエット方法」を知りたいと考えています。
インターネット上では常に食事の工夫や運動方法等など、手を変え品を変え「最新の効率的なダイエット法」が流行しています。
運動によって脂肪を燃焼する上で最も効率がいいといわれる「脂肪燃焼ゾーン」について、アングリア・ラスキン大学で運動科学や栄養学の講師を務めるジャスティン・ロバーツ氏らが解説しています。
運動による脂肪の燃焼について考えるには、まず人体の代謝について理解することが重要になります。
たとえ。1日中座っていて特に運動をしていなくても、人体はエネルギーを必要としています。
この需要を満たすために糖質、タンパク質、脂肪、リン酸塩といった物質を燃料にしてエネルギーを生み出しています。
これらの燃料を使う割合と使用可能な量は人それぞれで、食事内容や年齢、性別、運動の有無や激しさといった要因に左右されるとのこと。
一般的に、ウォーキングやゆっくりしたスピードのジョギングといった低い強度の運動は、全力疾走などの激しい運動ほど筋肉を酷使しません。これは体が必要とするエネルギー量が少ないことを意味しており、エネルギー量の需要が少ない場合は主に脂肪がエネルギー源として使用されます。
しかし、運動強度が増加した場合、脂肪を燃焼する方法ではエネルギー需要を満たすことができないため、人体は糖質をエネルギー源として消費します。
脂肪はエネルギーに変換されるのが遅い一方で、糖質は代謝によってエネルギーに変換されるのが脂肪よりも速いため、運動強度が増すほど糖質の利用が増加するとのこと。この点を踏まえて、「脂肪がエネルギー源として使用されやすい運動量が存在します」とロバーツ氏らは指摘。
安静状態では人体を機能させるために必要なエネルギーが少なく、この状態だと主に脂肪をエネルギー源として使用しています。一方、心拍数が1分間当たり160に近づくかなり激しい運動では、糖質を主なエネルギー源として使用することになり、この安静状態と激しい運動の間に「脂肪を消費するのに適した運動の強度」があると考えられるとのこと。
もっとも、「安静状態より運動強度が強く、息が苦しいほど激しい運動よりは強度が低い」では、あまりにも幅が広すぎます。そこで運動科学の研究者らは、さまざまな強度で運動する人の呼気を分析し、エネルギー源に使用される脂肪と糖質の割合を計算することで、適切な運動強度について評価してきたそうです。
過去の研究では、運動中の人間が消費できる酸素量の限界である最大酸素摂取量と比較して、50%~72%程度の酸素を消費する運動量が最も脂肪を燃焼しやすい「脂肪燃焼ゾーン」であると示されました。
一方、この脂肪燃焼ゾーンには個人差があり、持久力の高い運動選手ではもっと高い運動強度が必要との可能性も示唆されているほか、肥満の人々ではより低い24~46%程度の運動強度が脂肪燃焼ゾーンだとの研究結果もあります。
また、ダイエット目的で運動をする人が考慮するべきこととしては「運動中に実際に燃焼する脂肪の量はかなり少ない点」を挙げています。
たとえばアスリートを対象にした研究でも、脂肪燃焼ゾーンで1分間運動した場合に燃焼される脂肪はわずか0.5gに過ぎないことが示されました。
平均的な人ではさらに少なく、1分間当たり0.1~0.4g程度の脂肪しか燃焼できないとの研究結果もあり、ダイエットは一朝一夕に効果が出るものではないことがわかります。
運動で脂肪を燃焼させるのは長い道のりではあるものの、根気強い継続に加え、断続的な断食やケトン食ダイエットなどの食事法と組み合わせることで、実際に燃焼する脂肪の量が増えるという研究結果も示されていると解説しました。
*ケトン食療法:摂取エネルギーの60~90%を脂肪で摂るという、食事療法の一種です。糖質・炭水化物の摂取を可能な限り減らすことにより、通常エネルギー源として体内で使われている糖が枯渇します。
そして糖の代わりに脂肪が分解されると、ケトン体が発生・増殖します。
そのケトン体をエネルギー源として利用するというのが、ケトン食療法のメカニズムです。
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