新型コロナウイルス対策が進む欧米で、フリーランスの働き手を支えようと、各国が知恵を絞っている。音楽家やタクシー運転手らが休まざるを得なくなり、収入が激減しているからだ。
各国政府は大胆な財政出動で支援に乗り出しているが、財源をめぐる議論が追いついているとは言いがたい。日本も同様の課題に直面している。
ロンドンに住むトロンボーン奏者の男性(32)は、市内の歌劇場などで演奏して生計を立ててきた。ところが、感染対策で劇場が閉鎖。契約を破棄され、実入りがなくなった。男性は「正直に納税してきたので補償してもらえると信じている。だが、来年の今ごろこの仕事を続けられているか不安だ」と話す。
英国政府はフリーランスらを対象に、月2500ポンド(約33万円)を上限に所得の8割を補償する支援政策を26日に発表した。約380万人が対象になるとみられ、過去3年の確定申告をもとに支給額を決める。3カ月分を支給し、感染対応が長引けば延長もする。
感染が急速に広がる英国では、自宅待機の要請とともに娯楽施設や飲食店などが閉店を強いられている。英国の生活保護の申請件数は、16日からの9日間で約48万件に上り、失職が急速に広がっている。
英政府は20日に企業で働く人向けの支援を発表したが、フリーランスらが対象から漏れたことに批判が集中し、追加の支援を迫られた。
配車サービスやウェブデザインなど、ネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」の広がりで、雇用に頼らない働き手は世界的に増えている。早期に経済を回復させるには、こうした働き手も含めた経済の仕組みを維持することが欠かせない。
経済政策で支援する試みは、英国以外でも広がる。
政府発表や各国メディアによると、ドイツは自営業者らが3カ月で最大9千ユーロ(約108万円)を受けとれる仕組みを導入し、500億ユーロの予算を確保。フランスは最大1500ユーロ(約18万円)の支援金を出す。イタリアやスイスでも一定額を得られる。
米国は史上最大規模の2兆ドル(約220兆円)超の経済対策の中に支援策を盛り込んだ。個人事業主に失業保険の対象を広げ、過去の所得から支給額を算出。必要なら、週600ドルの給付金も受けられるという。
日本でもイベント自粛要請に伴い、音楽や劇場関係者らの収入が激減する問題が生じている。政府は、休校で子どもの世話をするため働けなくなったフリーランスの人々らを対象に、一定の条件を満たせば日額4100円を助成することを決めたが、追加支援策を望む声は多い。
■財源確保が課題
ただ、緊急事態に欧米でも財源確保の議論は追いついていない面もある。英シンクタンクは今回の英政府の措置に、約100億ポンド(約1・3兆円)の財源がいると試算する。期間が長引けばさらに膨らむ可能性がある。政府の借金が増えるのは確実で、いずれそのツケは国民に回ってくるとも指摘している。
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