オミクロン株の派生株「BA.2」は更に感染力、重症度が強力になっている?!

健康

佐藤佳准教授(東京大学医科学研究所)が率いる研究チームが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株のさらなる派生株「BA.2」に関する研究結果を発表しました。
佐藤准教授らによると、BA.2はデルタ株の重症化率とオミクロン株の抗ワクチン性を併せ持っています。

「BA.2」の脅威は、デンマークなど海外の研究では、「BA.2」は「BA.1」と比べて入院のリスクなどに差が見られないことが報告されています。

検証段階だがオミクロンのリスクが高まっているは否定できない

今回の研究対象となった「BA.2」は、オミクロン株である「BA.1」から派生したとみられる変異株。検査での特定が困難という特徴から「ステルスオミクロン」とも呼ばれるBA.2について、新たに佐藤氏らは「オミクロン株より強力なデルタ株に相当する重症化率を示す」「オミクロン株同様にワクチンによる免疫応答を回避する」という2点を明らかにしました。

今回、佐藤佳准教授らが発表した論文の概要について、佐藤氏自身が解説しているツイートです。今回の研究によって判明したポイントは、BA.2の感染力は「BA.1の1.4倍」相当で、すでにデンマークやインド、フィリピンでは感染の主流がBA.2に置き換わりつつあるという点。なお、報道によるとバングラディッシュ、ブルネイ、中国、デンマーク、グアム、インド、モンテネグロ、ネパール、パキスタン、フィリピンなど少なくとも10か国で実際にBA.2が優勢となっており、このうちデンマークでは入院率および死亡率の上昇が確認されているとのこと。

記以外にも、ワクチン接種者の血清を使った中和試験の結果、BA.2はワクチンによって誘導される中和抗体にきわめて抵抗性である上に、オミクロン株に対して有効とされている新型コロナウイルス感染症治療薬「ソトロビマブ」にまで耐性を有するという点。

ハムスターやマウスを使った実験によると、BA.1で獲得した免疫がBA.2に対しては効きづらいという点。

人工的に合成した「BA.2のスパイクタンパク質を有する新型コロナウイルス」は、ハムスターを使った実験でBA.1より高い病原性を示しており、細胞内での増殖速度も速いという点などが分かりました。

以上の点から、佐藤氏は「BA.2(ステルスオミクロン)は伝播力、病原性、免疫抵抗性のいずれにおいても、BA.1(従来のオミクロン)よりもリスクが高い」と述べ、日本国内での感染が広まりつつあるBA.2について警戒すべきだと主張しています。

なお、今回の論文はまだ査読を受けていない「プレプリント」の状態で、アメリカ国内における感染症対策を主導する疾病予防管理センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長は「BA.2系統がBA.1系統よりも深刻であるという証拠はありません。
CDCは、国内外に流行している変異型の監視を続けています」と回答しています。

コロナ感染のハムスターは「精巣が小さくなる」と判明、精子数と男性ホルモン量も大幅減

「精巣が小さくなる」と判明、精子数と男性ホルモン量も大幅減

新型コロナウイルスは肺炎以外にも認知機能の低下や頭痛など多様な症状を引き起こすことが報告されており、勃起不全や生殖能力の低下が確認された例も存在します。新たに香港大学の研究チームが、新型コロナウイルスに感染したハムスターにおける精巣の縮小や男性ホルモンの減少を報告しています。

以下は、
上段が健康なハムスターの精巣(左)と新型コロナウイルスに感染後42日目のハムスターの精巣(中央・右)の写真で、
下段が健康なハムスターの精巣(左)と新型コロナウイルス感染後120日目のハムスターの精巣(中央・右)の写真です。

写真を見ると、健康なハムスターと比べて新型コロナウイルスに感染したハムスターの精巣は小さくなっていることが分かります。研究チームによると、新型コロナウイルスワクチンを投与したハムスターでは、新型コロナウイルスに感染した後も精巣の縮小は確認されなかったとのこと。

ハムスターは「精巣が小さくなる」

以下のグラフは、新型コロナウイルスに感染させなかったハムスター(Mock)・感染後42日目(42)・感染後120日目(120)の精子の数を示しています。新型コロナウイルスに感染したハムスターは、感染していないハムスターと比べて精子数が有意に減少しています。

男性ホルモンの1種であるテストステロンの血中濃度を示す

また、男性ホルモンの1種であるテストステロンの血中濃度を示す以下のグラフを見ると、新型コロナウイルスに感染してから120日経過したハムスターのテストステロン濃度が有意に低くなることもわかります。

ハムスターの精巣に対して急性かつ慢性的な損傷を引き起こすと結論

研究チームは上記の結果から、新型コロナウイルスはハムスターの精巣に対して急性かつ慢性的な損傷を引き起こすと結論付けています。

人間でも生殖機能の低下となるかは更なる確認が必要

ハムスターは呼吸器に感染するウイルスへの反応が人間と似ているため、新型コロナの研究によく使われる。

新型コロナウイルスへの感染と人間の男性の生殖機能低下の関連が示されている過去の研究を挙げて「ハムスターの例は、人間で報告されている生殖能力の低下と一致しています。
シンガポール、南洋工科大学のウイルス学者リチャード・J・サグルー准教授は、ハムスターの実験から「ウイルスの病原性の進行について、有益な情報が得られる」と説明する。

 その一方で、人間とは生物学的に完全に同じではないことにも注意が必要であるという。
新型コロナウイルスに感染した男性の男性ホルモン濃度や精子数についても、長期的な観察を行う必要があります」と述べています。

Virological characteristics of SARS-CoV-2 BA.2 variant | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.02.14.480335v1

Coronavirus: As BA.2 subvariant of Omicron rises, lab studies point to signs of severity – CNN
https://edition.cnn.com/2022/02/17/health/ba-2-covid-severity/index.html

Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) infections by intranasal or testicular inoculation induces testicular damage preventable by vaccination in golden Syrian hamsters | Clinical Infectious Diseases | Oxford Academic
https://doi.org/10.1093/cid/ciac142

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